豊田副学校長にインタビュー 「行動と実践を通じて、自分磨きを」

 大阪保健福祉専門学校は、看護師はじめ医療・保健・福祉職の人材育成に力を入れています。そこに、看護分野で臨床、教育、行政と豊富な経験を有する豊田百合子氏(前大阪府看護協会会長)が昨年7月に副学校長に就任しました。半年余りが経ちましたが、改めて教育方針、学生への期待、看護師・医療職の心構えなど、考えを聞きました。

―医療職や介護・福祉職を目指す学生さんに望むこと、何を期待されますか。

【数多くの体験を―実践力】
「まずは実践が大事で、何事にも積極的に行動することです。自ら体を動かす、人を動かす、いろんな意味で行動して、数多く体験することです。様々な体験を通じて、人の気持ちがわかるようになります。本校の建学理念であります実学教育、人間教育に通じます。実践・体験を通じて自身を磨いて欲しい」

「看護学科の場合は3年制で、最終的には国家試験に合格する必要があります。これは必要不可欠な条件ですが、3年間を計画的に上手に過ごして欲しい。国家試験に合格するには授業、勉学、成績も大事ですが、校外実習、海外研修など体験を通じていろんな場面、状況を見て、段取り力、幅広い思考力、深い洞察力を身に付けて欲しい。いま、社会は実践的能力を持つ人材を求めています」

―学生さんの実習・体験学習では、何か新しいことを考えていますか。

【認知症のサポートに挑戦】
「高齢化社会を展望してのことですが、学生が認知症の方々のサポーターになれるような体制、仕組みを検討しています。地域包括支援センターなどとの連携を含めて、手続きを経て導入したいと思っています」
「また、地域社会への貢献の一環として、地域の病院と連携して大阪のある地区で働く方々の健康管理のサポートを実習として採り入れてみたい。こうした体験を通じて、コミュニティ(地域)づくりを推進する能力を養ってほしい」

―大阪府看護協会の会長時代には、日本看護サミットの大阪開催、桃谷センターの開設及び公益社団法人化を主導されました。国立循環器病センター看護部長時代には数々の改革をされたとか。こうした経験から、教職員に望むことは何でしょうか。

【マネジメント力の強化でイノベーション】
「マネジメント力をいま以上に強化したいと思っています。教職員が学科や担当を越えての連携を強化することで、組織的な対応力が生まれます。これによって学生の指導方法にこれまでと違ったイノベーションを起こしたい。本校だけでも9学科(他に通信教育4学科)があります。姉妹校となる大阪滋慶学園グループの専門学校6校を合わせると50ほどの学科となります。これらの学科が横の連携をとってコラボレーションすれば、大きなパワーとなります。積極的に発言、行動することで、マネジメント・組織力を発揮していきたい」

―豊田副学校長は、一貫して看護の分野を歩んでこられました。看護師の条件を挙げてください。

【状況判断が大事】
「まずは、よく眠れる人。つまりは体調管理、健康管理ができること。性格は明るい人。看護や介護・福祉の仕事は良いときもあれば、悪いときもあります。引きずらないこと、気持ちの切り替えが大事です。病気によっては患者さんの状況が時間とともに動き、変化します。いつも同じ気持ち、平常心での状況判断が大事となります」

「また、好奇心が旺盛なこと。医療はもとより、社会情勢にも関心を持って欲しい。そして五感するどく感性を磨いて、“美意識”を持ってもらいたい。例えば、手術の際に先生の華麗なテクニックを見て、調和とバランスという全体のハーモニーを学んで欲しい」

―全体の調和ということでは、いま医師を中心とするチーム医療が重視されています。そのなかで、看護師の役割は何でしょうか。

【総括的なキーパーソン】
「看護師の役割、職責は『傷病者若しくはじょく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行う』ことです。入退院を通して患者さんの生活を整えてあげること。病気の回復とともに在宅に至るまで、生活を援助するわけで、患者さんの全てをきちっとわかるのは看護師だと思います。その意味では、総括的なキーパーソンとも言えるでしょう。理論を含めて、患者さんと家族にはいろんな説明が必要で、説得力も身に付けて欲しい」

【医療と福祉の連携】
「それに、本校は『生命を育み(保育)』『生命を守り(医療・看護)』『生命を看取る(介護・福祉)』という学科(役割・使命)を備えています。単一学科にとどまらず、学科を越えたコラボレーションによって、『医療と福祉の連携を推進できる看護師を育成する』など、より高度なスキルを備えた人材を育てていきたい」

【インタビューを終えて】
 豊田副学校長は島根県の出身。島根人の気質は「打たれ強い。くよくよしない。引きずらない。常に前を向く」という。この気質を活かして、自ら一筋に歩んできた看護職に誇りを持ち、学生さんには「看護師を目指す限り、生涯続ける強い意志をもってほしい」とエールを送る。

 文中の職歴のほか、国立京都病院に入り、兵庫中央病院では、教官を経て教育主事・看護部長を歴任。厚生省保健医療局では責任者として看護師の養成指導にもあたった。臨床、教育、行政と各部門でリーダーシップを発揮、まさに“看護のエキスパート”。今も日本医療マネジメント学会の大阪支部長など務め、医療界に顔が広い。

 こうした経験豊富なキャリアを近藤雅臣学校長とともに、教職員、学生の教育・指導に当たる。厳しい指導の一面、優しい眼差しを持って、学生に接している。スピード、パワー、集中力をモットーに、学生のスキル・レベルアップに取り組む人材育成の手腕に期待したい。

 趣味は絵画、歌舞伎見物、神社仏閣めぐりなど。美的感覚、芸術的センスに優れ、絵画は趣味の域を超えている。今秋には百貨店で展覧会が予定されている。

(インタビュー・文責 大阪滋慶学園顧問・越智道雄)

(豊田副学校長の作品)


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